3月の終わり、午後5時。「引き継ぎ資料・まだ」という付箋を眺めながら、頭の中では「今日中に終わらせる!」と思いつつ、手だけが動かない。
私ミズキ、元ITサポートデスク歴8年。8年間で100人以上の後輩から「引き継ぎ資料、どうすればいいですか」と相談を受けてきました。そして正直に言うと、私自身も最初の3〜4年は毎年この罠にはまっていた。
でも去年、「AIと作業分担する60分メソッド」を確立してから状況が変わりました。3つの業務を同時引き継ぎしながら、それぞれ45〜55分で完成。後任者からの質問も激減しました。何をどう変えたのか、全部話します。
なぜ引き継ぎ資料は年度末ギリギリになるのか
「何を書けばいいかわからない」が諸悪の根源
引き継ぎが後回しになる理由を後輩に聞くと、だいたい「忙しかったから」という答えが返ってきます。でも本当の理由は別のところにある、と私は思っています。
白紙のドキュメントを開いたとき、最初にやることが「何を書くか考える」になってしまっているんです。これが致命的に非効率です。考えながら書こうとするから、手が止まる。
以前、私は4時間かけて引き継ぎ資料を作ったことがあります。業務フローを図解して、注意点も丁寧に書いて、見た目もきれいに整えた自信作。後任の田中さんに渡したら、開口一番「これ……何から読めばいいですか?」と言われました。
ショックでした。4時間を返してほしかった。でもそのとき気づいたんです。「自分にとってわかりやすい構成」と「引き継ぎ先にとってわかりやすい構成」は全然違う、ということを。
「構成を考える時間」と「内容を書く時間」が混在している
引き継ぎ作業が遅い人の共通パターンに、「目次を考えながら内容を書く」があります。この2つの作業を同時進行すると、脳のリソースが分散して両方が遅くなる。
解決策はシンプルで、構成はAIに任せて、自分は中身を出すことだけに集中すること。これだけで体感作業時間が半分以下になります。
【STEP1・最初の10分】AIに目次を丸投げする
ChatGPTでもClaudeでも、無料プランで十分です。以下のプロンプトをそのままコピーして使ってください。
- プロンプト:「私は〇〇担当です。後任に引き継ぐ資料の目次を作ってください。業務内容:[簡単に説明] 特に後任が困りそうなポイント:[あれば記入]」
30秒で5〜8項目の目次が出てきます。完璧じゃなくていい。8割の完成度で先に進むのがコツです。残りの2割は内容を書きながら自然に埋まります。
私が実際に使ったプロンプトはこんな内容です。「私は社内ヘルプデスク担当です。後任者向けの引き継ぎ資料の目次を作ってください。業務内容:社員からのPC・システムトラブル対応、週次レポート作成、外部ベンダーとの定例MTG調整。後任が困りそうな点:トラブル対応の優先順位づけと、複数ベンダーへの連絡の重複を避けること。」
1分以内にそのまま使えるクオリティの目次が出てきました。自分で考えていたら15分は使っていたと思います。
【STEP2・次の30分】セクションをAIで埋める
目次ができたら、各セクションの中身を埋めていきます。ここでの最大のポイントは「文章で書こうとしない」こと。
- そのセクションで伝えたい内容を、箇条書きで5〜7個書き出す
- 「理由・背景・注意点」も一言ずつ箇条書きに添える
- それをAIに「読みやすい文章にしてください」と投げる
- 出てきた文章を軽く手直しして貼り付ける
1セクションあたり3〜4分で完成します。6セクションあれば20〜25分。残り5分でつながりを整えれば、ステップ2は完了です。
通勤中に終わらせる「ボイスメモ×文字起こし」活用法
私が特に使い倒しているのが、スマホのボイスメモと文字起こしアプリの組み合わせです。
- 通勤電車の中で、業務手順を独り言のように喋りながら録音(イヤホンマイクを使うと周囲から見ても自然)
- 「Notta」や「Otter」などの文字起こしアプリで変換(Notta無料プランで月120分まで利用可)
- 変換されたテキストをそのままAIに貼り付けて「引き継ぎ資料のセクションとして整形してください」と指示
往復1時間の通勤がある人なら、出勤中に録音→昼休みに文字起こし変換→帰宅中にAIで整形、という流れでデスクに座らずに資料の骨格が完成します。
「ちゃんと話せるか不安」という人もいると思いますが、完璧に話す必要はまったくなく、「えーと」や「あ、そうだ」が入っていても問題ありません。AIが勝手に整理してくれます。
【STEP3・残り20分】「困ったときはここ」リストを作る
引き継ぎ資料の中で、後任者が一番参照するのはこのセクションです。詳細な手順書よりも、トラブルシューティングと連絡先の方が圧倒的に使われる。
最低限、以下の3項目を入れるだけでOKです。
- よくあるトラブルと対処法(3〜5個。「〇〇というエラーが出たら▲▲する」の形式)
- 連絡先リスト(社内担当者・取引先・緊急連絡先。名前・役職・連絡手段・一言メモ)
- 使うツール・システムのURL一覧(ログイン情報は別途セキュアな方法で渡す)
以前、私がこのセクションを丁寧に整備した結果、引き継ぎ後1週間の質問件数が23件から6件に減りました。「こんなことで聞いていいのかな」と思って確認してくる質問の大半が、このセクションで解決できるんです。
連絡先リストは、スマホの名刺管理アプリ(EightやWantedlyなど)やメールの連絡先から引っ張ってくるだけ。コピー&ペーストで5分もあれば完成します。
「トラブル対処法」は過去のメールから掘り起こす
「よくあるトラブルが思い出せない」という人は、メール・チャットの検索で「困った」「エラー」「急ぎ」「対応お願い」などのワードで絞り込んでみてください。過去1〜2年分を見るだけで、確実に3〜5パターンは出てきます。
それをAIに「これらの事例からトラブルシューティングリストを作ってください」と投げると、5分で整理されたリストになります。
仕上げ:Googleドキュメントで共有まで5分
完成した資料はWordではなく、GoogleドキュメントかNotionで作成することを強くすすめます。
理由は単純で、あとで「ファイルどこですか?」「バージョンどれが最新?」という混乱が起きないからです。URLを1本送るだけで完結する。
共有設定を「リンクを知っている全員が閲覧可」にして、そのURLをSlackかメールで後任者に送れば終わりです。印刷不要、USBメモリ不要、保存場所の説明不要。
Googleドキュメントには「コメント機能」もあるので、後任者が「ここわからない」と気づいた箇所にコメントを入れてもらい、後で補足するという使い方も便利です。資料が使われる中で育っていく感じがして、個人的に気に入っています。
やってみてわかった落とし穴と対策
最初にこのメソッドを試したとき、いくつか失敗した部分もあります。同じ轍を踏まないように書いておきます。
AIに任せすぎて「業務の本質」が抜けた
AIが生成した文章は読みやすいのですが、「なぜその手順になっているか」という背景が抜けることがあります。私の場合、ベンダーAとベンダーBへの連絡順序に明確な理由があったのに、AIが整形したら「連絡先A・B・C」という並列リストになってしまいました。
対策は、箇条書きを出すときに「理由・背景・注意点」も一緒に書き出すこと。「ベンダーAに先に連絡する理由:コントロールタワーになっているため、B・Cより先に動くと情報がずれる」のように一言添えるだけで、AIが文章に組み込んでくれます。
完璧を目指してループしてしまう
「もっと詳しく書いた方がいいか」と思い始めると止まらなくなります。こうなると時短メソッドを使っている意味がなくなる。
タイマーを実際に60分でセットして、タイムオーバーしたら一旦完成にする、というルールを自分に課すのが有効でした。資料は後から加筆できますし、使われる中で改善されていく性質のものです。
年度末を乗り切る3つの原則
引き継ぎ資料を1時間で完成させるための核心は3つです。
- 構成はAIに、中身は自分が出す(考える作業と書く作業を分ける)
- 文章にしない、箇条書きで出す(整形はAIがやる)
- タイマーをセットして「完璧より完成」を優先する
まず今日、10分だけ試してみてください。プロンプトを投げてAIに目次を作らせるだけでいい。それだけで「何を書くか迷う時間」がゼロになって、残り50分の使い方が見えてきます。


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