AIに整理させたら、ハルが一番感動してた話

Bearded man wearing casual clothes sitting at table and working on laptop and explaining details of project to women while working 編集部コラム
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ミズキが「AIに全部整理させましょう」と言い出したのは、水曜日の午後2時ごろだった。

Zoom越しに映るミズキの背後、配線がぐるぐる巻きになったデスクが見えていて、「この人のデスク、毎回すごいな」と思いながら私は話を聞いていた。

「通知の整理、AIに任せると劇的に変わりますよ。みなさんまだ手作業でやってますよね?」

ハルが「……それ、具体的には?」と返した。

半信半疑の声だった。ハルの「それ具体的には?」は、だいたい「その主張、信用してないですよ」のサインなので、私はこっそり会議が長引く予感を覚えた。

でも実際にミズキがスマホ画面を共有して、AIが通知を優先度順に並べてくれる様子を見せたら——ハルが「これ、どのアプリですか」って前のめりになった。

一番食いついたのが、一番懐疑的だったハルだった。

ミズキが「えっ、あ、えーと……」ってちょっと焦ってたのも含めて、なんか好きな瞬間です。

バッジを全部消すと言い張るミズキに、ハルとコウタが2方向から突っ込んだ

同じ会議で、ミズキが「バッジは全部消しで当然ですよね」と言い切った。

スマホのアイコンに表示される赤い数字、あれです。未読数を示すやつ。

「Slackのバッジも消すのは、仕事的にどうなんですか」

ハルが静かに言った。ミズキが「それは……フォーカス機能で対応できて……」と言いよどんで、「調べます」と着地した。ミズキが「調べます」と言うのはかなりレアで、いつもは「それもうやってます」か「まだ手作業でやってるんですか?」で返ってくる人なので、私は少し驚いた。

「ていうかそれ、Slackのバッジ消すのはSEOで書けないですよ〜」

コウタが画面の端でニコニコしながら言った。

「そっちの問題もあったか」と全員が一瞬静止した3秒、なんか好きです。

通知の話は最終的に「バッジはオフにしないけど、バナー通知は切る」という穏当な着地になった。ミズキは納得してないっぽかったけど、フォーカス機能の調査結果は翌日Slackで丁寧に共有してきた。あのちゃんとしたフォロー力、編集部の中で一番だと思う。

「2サービス使い分け論」が採用されるまで30秒しかかからなかった

通知管理の記事、もう一つ問題があった。

ミズキが「個人連絡はLINE、仕事はSlack、それぞれに最適化する2サービス使い分け論を入れたい」と言い始めたとき、ハルが「情報が多くなりすぎませんか」と難色を示した。

私も正直、「ミズキの盛りすぎかな」と一瞬思った。

でも聞いてみると、説明がわかりやすかった。「個人連絡はLINE、仕事はSlackって割り切って、通知設定をそれぞれ最適化する」——そう整理されると複雑じゃない。

「具体的でいい」と私が言ったら、ハルが「……そうですね」と言った。即採用。30秒も経ってない。

編集会議って、「無理かも」が「これでいこう」になるまでの時間が、早い時は本当に早い。その一言で全体のトーンが変わる瞬間がある。私の仕事の中で、そういう瞬間が好きです。

タケルが給食センターと水分補給を結びつけた、あの瞬間

水曜の夕方、タケルが水分補給の記事を持ってきた。

「これ、給食センターの仕込みの段取りと完全に同じ発想や!」

興奮気味で言うから「どういうこと?」と聞いたら、「1日に飲む分の水を朝にまとめて用意しておく、っていう発想が、仕込みと同じなんです。大量調理は段取りが命なんで」と説明してくれた。

なるほど確かに。「冷凍庫は第二の脳」が持論のタケルらしい結びつけで、私はすぐゴーサインを出した。

したらハルが「体温計の値段、ちゃんと調べましたか?」と静かに聞いた。

「え? 体温計ですか?」

「記事に体温計の使用を勧めるなら、価格帯がないと読者が判断できません」

タケルが「健康管理グッズのコーナーに入れようかと……」と言ったら、「それは入れなくていいです」と一刀両断された。タケルが「はい、わかりました」って素直に引いたのを見て、ハルの「入れなくていいです」はだいたい正しいと改めて思った。

ちなみにこの記事、タケルが「救急車のエピソードを冒頭に持ってくると重くないですか」と私に相談してきた場面もあった。私は「事実なら問題ない」と思って通したし、ハルも「事実なら問題なし」と後押しした。コウタだけが「玄関セットってSEO的に弱くないですか?」と最後まで心配していた。「コウタ、それは別の問題」って言ったら「そ、そうですよね!」って引いた。コウタはいつもこうで、ハルの指摘にはビクビクするくせに、SEOのことになると急にソワソワする。

原稿より先にスプレッドシートを開くのだけは勘弁してほしい

売り場順リストの記事で、ミズキがやらかした。

「売り場テンプレートを作りました、見てください」

そう言いながら画面共有し始めて、開いたのはGoogleスプレッドシートだった。縦に長い、細かい、きれいにまとまってる。

「ミズキ、原稿書いて」

「あ、でも、このテンプレを元に構成を……」

「原稿書いて」

繰り返したら「わかりました」と言った。2回目の「原稿書いて」が効いた。

会議後にSlackで「テンプレ作るの楽しかったのに……」って送ってきたけど、知りません。どんなにテンプレが完成されていても、原稿がなければ記事にはなりません。

同じ流れで、メール管理の記事についても「自動振り分けのくだり、もう少し詳しく書いてほしい」と伝えたら、「OutlookもGmailも両方入れたんで勘弁してください」と苦笑いで返ってきた。「じゃあそれで十分です」で着地した。この「勘弁してください」、わかりみが深い。両方調べてきた努力は原稿にちゃんと出てた。

「それ2021年に終了してますよ」の後のミズキの沈黙

今週の白眉はここだった。

ミズキのメール管理記事の原稿、内容はよかった。自動振り分けの説明も、2サービスの使い分けも、丁寧にまとまってた。

ハルが原稿をチェックして、チャットに一言送ってきた。

「『無制限で保存できる』は2021年に終了しています」

私がミズキに転送した。

返信が「えっ!?」で止まった。

10分後に「確認します」、30分後に修正版が届いた。ハルが添付してた参考URLを見たら、確かに2021年にストレージ上限が設定された、とちゃんと書いてあった。

「えっ!?」って固まるくらい知らなかった、でも30分で直してくる——これがミズキのいいところだと思う。知識の抜けを素直に認めて、すぐ埋める。それができないライターの方が実は多い。

ハルが「ご確認ありがとうございます」と一言返した。そのやりとり、短すぎてほっこりした。

こういう週があると、私はわりと満足する。

記事が全部きれいに流れた週より、どこかで「それ2021年に終了してますよ」が出てきたり、スプレッドシートを先に開かれたり、バッジを全消しにしようとするミズキをハルが静かに止めたりする週のほうが、充実感がある。

記事を作るのって、情報を整理するだけじゃなくて、こういう小さい衝突と確認の積み重ねなんだな、と改めて思う。

来週、ミズキはまた何か新しい主張を持ってくる。ハルはまた静かに事実で返す。タケルは給食センターに何かを結びつける。コウタはSEOを心配する。

「それ、何秒でできる?」って私はいつも思ってるんだけど、この編集部の掛け合いだけは、いくら時間かかっても損した気がしない。

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