51品目の甥っ子と、こぶし一個の謎

Two people working at an office desk with coffee, laptop, and financial documents. 編集部コラム
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ミズキが「51品目」って書いてきたとき、正直二度見した。

「Amazon vs 楽天」の比較記事の下書き。冒頭の一文が「甥っ子が頼んだもの、51品目が積み上がってた」。

「これ実話?」

「甥っ子案件です、マジで」

ミズキは全然悪びれなかった。それどころか「51品目を仕分けた結果、楽天ポイントで買ったほうが得だったものが27品目でした」と続けてきて、私は感心する前に「取材費、甥っ子から取れないよ」ってつっこんでた。

今週の編集部、だいたいこんな感じだった。

日曜の作り置き、やる人います?

タケルが作り置き記事を書いてたのと同じタイミングで、ミズキがSlackに一言飛ばしてきた。

「それ、日曜にやる人います?」

元給食センター調理師のタケルが丁寧に組み上げた段取り記事だ。「朝6時から始めれば12時には終わる」「鍋3つ同時に動かすコツ」、去年子供が生まれてから余計に磨かれた段取り力が詰まってる。

「ミズキ、それ自分基準で言ってるでしょ」

私が返したら「違います、読者目線です」と来た。

「あなたはやらなくていいから」

即返信したら10秒後に「了解です」、スタンプがラーメン食べてる絵文字だった。なんなの。

でもミズキのこういう一言、実は大事なんですよ。「日曜3時間も料理できるか」って読者は絶対いる。タケルが「じゃあ忙しい人向けの30分バージョンも入れるか」と言い出して、記事が一段厚くなった。ブレーキのつもりがアクセルになる、ミズキあるある。

そのこぶし、でかすぎませんか

タケルが冷蔵庫収納の記事に「こぶし一個分の隙間を作る」という表現を持ち込んだ。冷気が回らなくなるから詰めすぎ注意、その目安として。「僕も実際にやってみたんだけど」と言いながらスマホで冷蔵庫の写真まで撮ってきてた。

コウタが記事を読んで、一言。

「そのこぶし、でかすぎませんか」

編集部が0.5秒止まった。

タケルが「え」って顔をして、コウタが「タケルさんの手、俺の握りこぶしの1.5倍あるじゃないですか」と言い出した。確かに。元調理師の手はでかい。こぶし一個の隙間、読者によっては「え、こんなに空けるの?」ってなりかねない。

ハルが静かに言った。「参考値として女性の平均的な手のサイズも補足すると、読者が自分で判断しやすいですね」

記事に「大人の手のこぶし一個分(約12〜14cm)を目安に」という注釈が入った。コウタのツッコミがハルの精度上げに変換される、この流れが好きだ。

「念のため症候群」、ほぼ自分のことでした

ミズキが防災用品の収納記事を書いてたとき、「念のため症候群」という節を入れてきた。「とりあえず買っておこう」「念のため取っておこう」でどんどん物が増えていく、あの心理の話。

読んでたら、描写がやたらリアルだった。

「ミズキ、これ自分のこと書いてる?」

「……少し」

「少しって何段階中の少し?」

7段階中の6くらい

ほぼ全部じゃないですか。

でも笑えない。ミズキが「元ITカスタマーサポートだったんで、ユーザーの心理がわかる」と言うとき、それはだいたい「自分もそっち側にいた」という告白と一体になってる。使い方がわからなくて放置してるガジェット、配線が増えすぎてどれが何かわからなくなってるデスク。「これ、自分でやらかした話ですよね」って確認したら「全部実体験です」って返ってきた。

自分の失敗から書いてるから読者に刺さる。「念のため症候群」の節、そのまま残した。少し赤くなってたミズキには、あえて何も言わなかった。

冷蔵庫の前でレシートを撮るのは、儀式である

「冷蔵庫の前でレシートを撮るの、もはや儀式」

家計管理アプリ記事のアイデア出しのとき、ミズキが言い出した。買い物から帰るたびに冷蔵庫の前に立って、レシートをスキャンして、在庫と照合する。毎回同じ動作を繰り返してたら、それが「儀式」になってたと。

「それ記事に書いていいよ」

即答した。「家計管理は習慣化が大事」なんて一般論より、「儀式」という言葉のほうが読む人の体にすっと入る。

コウタが「ちょっと待って、それって著作権大丈夫ですか」と言い出した。

「何が?」

「儀式って言葉、誰かが先に商標取ってたりしないですか」

「取ってないよ」

「でも万が一……」

コウタのこういう心配、最初は「細かすぎ」と思ってたけど、最近は「まあ確認する習慣はいいか」と思うようになってきた。おかげで記事に不用意なリスクが入らない。今回は儀式なので問題なし。

デジタル化は、捨てたあとの話

今週いちばん手応えがあったのは、ミズキの書類整理の記事だった。

最初、ミズキは「スキャンして終わり」という切り口で構成を考えてたらしい。スキャナーやアプリで書類をデジタル化すれば解決、という方向で。

「あー、でもそれだと本質じゃないよね」

私が言ったら、ミズキが「そうなんですよ」と返してきた。

「デジタル化って、整理できてから初めて意味あるんですよ。ITサポートで散々見てきたんですけど、クラウドに上げてもフォルダが爆発してる人、めちゃくちゃ多くて」

「物理とデジタル、両方カオスになるやつね」

「だから今回は『捨てる判断を先にする』に絞りました。ガジェット紹介したいのは山々なんですけど(笑)」

ミズキの強みが出た瞬間だと思う。自称ズボラで「それ、まだ手作業でやってるんですか?」が決めゼリフな人が、「デジタル化より先に捨てろ」と言う。矛盾してるようで、矛盾してない。

ただ、下処理の工程を10個書いてきたのは多かった。ハルが「90分で終わるという想定で書かれていますが、10工程を90分というのは少し無理がある気もします」と言い出して、ミズキが「では計り直します」と宣言した。

翌日、「78分でした。ただし私のペースなので読者は+20分見てください」という修正メモが来た。実際に計り直すライター、なかなかいない。

記事は10工程から3工程に絞られて、一気に読みやすくなった。一番好評だったのは場所別の早見表で、コウタが「これ俺もパクっていいですか」と言ってたのはここだけの話。

今週の編集部、振り返るとだいたいミズキが騒動の中心にいた。51品目の甥っ子に始まり、念のため症候群の自白、冷蔵庫の前の儀式宣言、10工程の計り直し。タケルのこぶしはコウタに潰されてハルが補完し、Slackの一言がアクセルになった。

「洗剤リストなんて30秒で作れるっしょ」とミズキが断言して、コウタが「その自信どこから来てるんですか……」と苦笑してた記事も完成した。衣替えの真空パック、いる?って言い出したのもミズキで、私が笑いながらGOを出したのも結局私だ。

私が笑いながらGOを出すのは、だいたいミズキのネタだな、と今週初めて気づいた。

まあいいか。今日もサウナ行く。

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